2013年10月30日水曜日

loving の謎2

で、まずはOALD (Oxford Advanced Learner's Dictionary) で引いてみます。これは British版のほうのですが、American 版 (Oxford Advanced American Dictionary for Learners of English) も書いてあることはほぼ同じでした。なお、以降、単にコピペしただけだとうまく行かないため、引用はどれもちょっと整形しています。

1 feeling or showing love and affection for somebody/something
Synonym -> affectionate, tender
  • a warm and loving family
  • She chose the present with loving care.

これは Synonym で tender が入っているので、そこで、なるほどと思います。例文の loving をそれで置き換えてみると、誰が誰を愛しているとかそういうことではなくて、ホットなイメージと言いますか、暖かいと言いますか、for somebody/ something ってのはここでは実は割と対象が特定されてないってことなんじゃないかと思います。辞書に訳は載らないでしょうし意味合いも違うと言えば違いますが、「ラブラブな」ってのにも割と近い気がします。定義は、「人や物への愛情や愛着を持っているか、あるいは周囲からそう感じられる」ってような感じになるでしょうか。

次、LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) です。これは British 版しか無料検索はできないみたいです。すいません。

1 [only before noun] behaving in a way that shows you love someone
<loving wife/family/parents etc>
  • the confidence he had gained from having a warm and loving family
  • What that child needs is plenty of loving care.
  • He's very loving and affectionate with his sister.

うーんこれだと案外難しい。これはたぶん、私の想像では Collins Cobuild の影響なのではないかと。これは OALD もそうだと思うんですが、多かれ少なかれ、良かれ悪しかれ、影響を受けているんじゃないかと思います。昔の LDOCEでは "showing or expressing love; fond" でした。うちのその紙の辞書は第2版だったかな。1992年版ですね。 "behaving in a way that shows love" に縮めたほうがいいんじゃ? この定義の中の love の主語は you じゃなくて、loving で修飾されている someone が他の someone を love ってことだと思うんですが、 you が love の前にきているため you  が主語みたいに見えてしまう。つまり、「あなたが誰かを愛していると分かるように振舞っている」(何だそりゃ)みたいに見えてしまうのですが、そうではなくて、どうやら、「[名詞の前について] 誰かを愛しているということが明らかな振る舞いをしている」ということになるようですねこの定義は。

Collins Cobuild はfreeでは検索できないと思っていたのでしたが、"loving" については myCOBUILD.comで検索できましたので引用しておきます。

1 ADJ Someone who is loving feels or shows love to other people.
  • Jim was a most loving husband and father.
  • The children there were very loving to me.

 これは、「loving な誰かは、他の人を愛しているか、あるいはそのように見えるかしている」ってことを言っているわけなんですね。定義ではなくて、loving がついている場合にそれはどういうことかという説明をしている。COBUILD の特徴です。これはうちにある1988年版(初版のReprint版)の紙の辞書から変わっていないようです。
ついでに、COBUILD じゃない普通の Collins English Dictionary では

feeling, showing, or indicating love and affection

となっていますね。この辞書では例文が definition のそこにすぐ出てくるわけではないのですが usage example をクリックするとたくさん出てきます。あまりに多いので引用は自粛させていただきます。「愛情やら恋心やらがあり、そう見えたりそれとなくそうだと分かったりする」ってような定義になっていますよね(訳語が行き当たりばったりで一貫性がなくてすいません)。

CDO (Cambridge Dictionary Online) です。これは British 版と American 版 が異なり、Learners 版と Essential 版がありますが、Learners 版には英米の区別はないみたいですし Essential 版は分離していますが中身が同じです。数字が入ってませんが意味が小分けされていません。なお、実は Cambridge Advanced Learners Dictionary というのも出ておりますが、無料検索はできないようですね。私が以前購入した1995年版の Cambridge International Dictionary of English というそれの前のものには、 loving の項目も、あるにはあったのですが、 See at love ということで love への送りになってしまっていました。

<British>
showing a lot of love towards someone:
  • a loving relationship
  • He's a very loving child. 
  • She's very loving.
<American>
providing and showing strong affection or affection and a strong attraction:
  • a loving home/relationship 
<Learners>
showing a lot of affection and kindness towards someone:
  • a loving relationship
  • a loving father
<Essencial British & American>
showing that you love someone:
  • a loving father

British 版と American 版で違いがありますが、イメージ的には British 版 は割とさらりとしていて、 American 版のほうがやはり熱が入っているみたいな感じでしょうか。
lot of や strong やらで強化されている点は同じですが、American 版の or (あるいは) のあとの (strongはついてないが) affection (恋慕的な気持ち) and (に加えて) strong な attraction (魅力) を provide (備え) していて showing (それがはっきりと感じられる) という力強い定義には、私はちょっと感動してしまいました。でも、home や relationship がそうだと言われてもなぁ ... (さっき affection を恋慕的な気持ちなんて訳した私がいけないのか)。
British 版の例文はいいのが入っていますね。"She's very loving." なんて言われたら思わず、何を愛しているのかと思ってしまいそうなわけですが、要は、「とっても優しくて良い娘なんだよ」って感じになるんでしょうね。これが American 版にないのは、たぶん America では実はあんまりそういう使い方をしないんじゃないかと ... 私は思いますけど、どうなのか。家だったらね、人ではないから loving にしても家が愛している主体になるって変でしょ? 関係だったらね、相互関係で愛し合うってことにできるわけだし。
Learners のは「誰かへの愛情や優しさが豊富にあると感じられる」わけでしょう。まあ、例文には "a loving father" が入ってます。で、この辞書とその下の Essential 版は英米版の区別がないようですが、Essential 版に至っては、定義が、何と"showing that you love someone" になってしまっています。つまり、これだと、"a loving father" の "loving"の主体が "father" ではなく "you" ですよね。ことによると、これは先に引用した Longman の辞書の影響なのかも知れないと考えていますが ... 。たぶん、ネイティブだって混乱するし間違えるし、誤解してないかと言うと、そんなの辞書引かなきゃ分からないし、引いたって分からない場合があるし、分かるもんかそんなのってのが、割と普通(?)なんじゃないかと推測しているんですけどね。でもね、English の権威はやはり British の側にあるわけで、American な English Dictionary というのは微妙なところにあるんだろうなと思います。

MD (Macmillan Dictionary) です。オプションで British でも American でも検索できますが、書いてあることは同じでした。これも意味が小分けされていません。うちにあるのは Macmillan English Dictionary for Advanced Learner of American English の2002年版ですが、書いてあることはまるっきり同じです。

feeling or showing love
  • A child needs two loving parents.
  • a loving relationship
  • Show him plenty of understanding and loving kindness.

 私が思うには、これだけで分かるかどうかはともかく、この訳が最も簡潔明瞭で適切な気がします。で、よく見てみたらこれは、私が持っている Oxford Mini Dictionary & Thesaurus に出てくるのと全く同じ訳でした。で、これらの例文の場合、それぞれ、まあ訳してみれば、「子供には愛情のある両親が必要」「暖かい人間関係」「彼に精一杯の理解と愛情のこもったいたわりの気持ちを示す」みたいなことになると思いますが、何しろ、日本の学習英和辞典みたいに1~3まで定義分類をしていないですし、私が調べていたのはそのうちの1に相当する用法だけでしたので、意味合いとしてはちょっとずれてしまっていますね。

で、MWLD (Merriam Webster Learner's Dictionary) です。

1 : feeling or showing love : affectionate
  • a loving home/family 
  • a loving glance 
  • a loving husband/wife

これも、affective が同義語として入っている以外は先のものと定義が全く同じです。「愛のある家庭/家族」「暖かい視線」「優しい夫/妻」ってな具合に訳すしかないのかなと思いますが、これまた簡潔明瞭ですね。Merriam の Webster は米国では辞書の代名詞みたいなもので、カップヌードルがカップ麺の代名詞ってぐらいのもの (ってたとえが悪いかも知れませんが) みたいですから、そこの学習英英ってのはやっぱり、一種のブランド品ってのがあるんだろうな、などと思います。

あとは、つい長々と書いてしまいましたが、何を書いているのか分からなくなってしまいましたので、延々と続けるのをやめました。結局は、loving のあとに続く名詞が loving の主語に相当するのか目的語なのかということになると思います。文脈で判断するしかないのでしょうね。

2013年10月29日火曜日

loving の謎

そういうわけで再出発いたします。

で、早速ですが、実は今日重大な問題を発見したのですが、
テーブル内、三省堂さんのWeb Dictionaryウィズダム英和辞典 第3版からの引用です。
ってこれコピーOKですか三省堂様。使わせていただきます。すいません。恐れ入ります。

 1  [通例 の前で] 愛情のある; 優しい; 好意的な 〈人〉 (affectionate); 《…に》 愛情を示すto
  my loving husband  私の優しい夫 (「私の愛する夫」の意味ではないことに注意) 

いやはや、実はそんなこと気付かずにいたんです。引いてみてびっくり。
引いてみないと分からないもんですよね。って実はこれはアマゾンさんで、
同辞書のレビューを書いて下さっていたかたが
この件について書いて下さっていたので引いてみたのでした。なるほど。

同じ三省堂さんWeb Dictionaryグランドコンサイス英和辞典(Web更新版)では

[1] 愛する; 愛情のこもった.
loving glances  愛情のこもったまなざし.
Your loving son, John.  (あなたを)愛する息子ジョン(より) 《親にあてた手紙の結び》.

なるほどよく見ると、ああそうかと思いますがよく見ないと気付かずに終わりそう。

 『コンサイスEX英和辞典』
(デジタル版オリジナル)と
デイリーコンサイス英和辞典 第6版』
(リンク先の書籍は第8版)では
追い込み派生語の数は異なるものの訳語自体は共通で


━━ a. 愛する; 親愛な.


なんですね。これでは分からない。

提携版Web辞書(研究社さん)の新英和大辞典(リンク先の書籍は第六版 ― 並装)では

1 a 愛情のある, 慈愛に満ちた, 優しい.
loving hearts, words, glances, etc.
Your loving mother  愛する母より 《手紙の結句》.

これもなるほどですが、そうか、何しろそう注意してもらわないとうっかり見過ごしてしまうかも。
ってより、これだとやっぱり曖昧ですよね。
ですから、私が今頃そんなことを言っているからって不思議に思わないでいただきたい。
だって、学校でそんな細かいことなかなか教えないでしょうし、
辞書を見て気付くかどうかだって、だいたい、lovingなんて引かない。

なお、研究社さんの名誉のため、Web版『ルミナス英和・和英辞典』(書籍版は『ルミナス英和辞典 第2版 (函入り) 』と『ルミナス和英辞典 第2版 (函入り) 』)を引いてみますと(研究社様、使わせていただきます。有難うございます)、

1 (人を)愛する, 愛情に満ちた.
・my loving daughter (親を思ってくれる)情愛のある[優しい]娘.
・Your loving friend, あなたを愛している友より(あなたの親友より) 《手紙の結び》.

これも親切ですよね。よく見れば、確かに、なるほどと思います。

ただ、 そうなのかと思いつつも私が大問題だと思うのは、
何故そんなややこしいことになっているのかってことと、
だいたい、英米人と言うか英語のネイティブのかたがたの頭の中は、
この件に関してどうなっているんだということでして、
さて、ここからが私の推理と探求の始まりです。

いったんここで保存して次に行きますね。ブログなので、新しいものが先に行ってしまいますから変なんですけど。